春の足音が聞こえ始めると、ランドセルを背負って元気に登校する子供たちの姿が目に浮かびます。期待に胸を膨らませる一方で、親御さんの心にふとよぎるのは「あの子は一人で、安全に学校まで行けるだろうか?」という小さくて大きな不安ではないでしょうか。
特に今年から1年生になる年長さんや、行動範囲が広がる低学年のパパ・ママにとって、通学路の安全はもっとも気になるテーマの一つです。
「危ない道は通っちゃダメだよ」「知らない人について行かないでね」
そう言い聞かせてはいても、子供の目線は大人とは驚くほど違います。大人が「見通しが良い」と思う道でも、子供の身長では塀が高くて角が見えないかもしれません。大人が「静かな住宅街」と思う場所は、子供にとっては「助けを呼んでも誰にも気づかれない場所」かもしれません。
だからこそ、いま提案したいのが、親子で一緒に通学路を歩き、世界に一つだけの「わが家だけの安全マップ」を作ることです。
これは単なる地図作りではありません。親子で「もしも」を想像し、対話を重ねることで、お子さんの中に「自分の身を守る力(生き抜く力)」を育む大切なステップです。

なぜ「既製品の地図」ではなく、手作りが必要なの?
学校から配布されるハザードマップや防犯マップは、非常に優れた情報源です。しかし、それはあくまで「地域全体の一般的な危険」を示したもの。
「わが家だけの安全マップ」が特別な理由は、そこに「その子自身の感覚」と「家族の約束」が書き込まれるからです。
- 子供の歩幅で歩く: 20分かかる道のりも、子供にとっては大冒険です。
- 子供の視点で見る: 100〜120cmの視界で見える危険を確認できます。
- 具体的な「逃げ込み先」を決める: 「コンビニに逃げなさい」ではなく、「あそこの青い屋根のクリーニング屋さんは、おばちゃんがいつもいるから助けてくれるよ」と具体化できます。
地図を作る過程そのものが、お子さんにとっての「安全教育」の授業になります。
実践!「わが家だけの安全マップ」の作り方
週末の午前中など、時間に余裕がある時に、ピクニック気分で出かけてみましょう。
1. 準備するもの
- 白地図(またはノート): スマホの地図を印刷したものでも、手書きでもOKです。
- ペン(数色): 危険な場所、助けてくれる場所を色分けします。
- スマホ(カメラ): 子供の目線で写真を撮るために使います。
- お子さんの好きなおやつ: 楽しく歩くための必須アイテムです。

2. 親子の視点を切り替えて歩く
歩くときは、親が先導するのではなく、ぜひ「お子さんにガイド」をしてもらいましょう。
「今日は〇〇くん(ちゃん)が隊長だよ!学校まで安全にたどり着けるか、パパとママを案内してね」
こう声をかけることで、子供は「守られる対象」から「自分で判断する主体」へと意識が変わります。
3. チェックすべき「4つのポイント」
歩きながら、以下のポイントを一緒に確認し、地図に書き込んでいきましょう。
| 項目 | チェック内容 | 地図への記載例 |
| ひまわり | ひとりにならない、まわりをよく見る、わかれ道に注意、り(利用)するなら明るい道。 | 「ここは一人になりやすいから早歩き!」 |
| いかのおすし | いかない、のらない、おおごえを出す、すぐ逃げる、しらせる。 | 「何かあったらこのお店に駆け込む」 |
| 見通し | 角を曲がる時、相手から自分が見えるか? | 「ミラーがあるけど、車が来ないか止まって確認」 |
| 音と光 | 暗くなった時に街灯はあるか?工事の音で声が消されないか? | 「暗くなったらこっちの大きい道を通る」 |
4. 写真を撮って「子供目線」を残す
「ここ、危なそうだよ」と思った場所では、ぜひ子供の身長まで腰を落として写真を撮ってみてください。
大人の目線では見えていた「交差点を曲がってくる車」が、子供の高さにある植え込みのせいで全く見えないことに驚くはずです。その写真を地図に貼ることで、よりリアルな注意喚起になります。
悩めるパパ・ママへ。よくある不安への処方箋
記事を読んでいる皆さんの心の声を想像してみます。
Q. 「怖がらせすぎて、外に出るのが嫌いにならない?」
もっともな心配です。防犯教育のゴールは「怖がらせること」ではなく「自信を持たせること」です。
「悪い人がいるから気をつけて」と言うよりも、「ここを気をつければ、一人でも安全に歩けるようになるよ。パパとママは〇〇くんを信じているよ」と、ポジティブなメッセージを添えてあげてください。
Q. 「共働きで、毎日一緒に歩いてあげられない……」
毎日である必要はありません。季節の変わり目や、進級のタイミングなど、半年に一度歩き直すだけでも十分です。また、マップを作ることで、普段の会話の中に「今日はあのクリーニング屋さん、開いてた?」といったコミュニケーションが生まれ、離れていても繋がっている安心感を与えられます。
完成したマップは「家族の宝物」
家に帰ったら、歩いた記憶が新しいうちに地図を仕上げましょう。
色を塗ったり、シールを貼ったり。「ここはワンちゃんが吠えるからびっくりするポイント」「ここは雨の日、水たまりができやすい場所」など、子供らしい発見もどんどん書き込んでください。
完成したマップは、ぜひ玄関の目立つところに貼ってください。
毎朝、靴を履く時にその地図が目に入ることで、お子さんは無意識のうちに「自分の安全を守るスイッチ」を入れることができます。

おわりに:守る力は、愛されているという実感から
「わが家だけの安全マップ」作り。それは、お子さんにとって「自分はこんなに大切にされているんだ」ということを肌で感じる時間でもあります。
「もしも」の時に、子供がパニックにならずに動けるのは、知識があるからだけではありません。「お父さん、お母さんと一緒に決めたあの約束がある」という心の支えがあるからです。
小学校入学や進級は、親離れ・子離れの第一歩。
不安をゼロにすることはできませんが、一緒に歩くその一歩一歩が、お子さんの「自立」という大きな背中を支える確かな土台になります。
今度のお休み、少しだけ時間をとって、お子さんと一緒に通学路の冒険に出かけてみませんか?


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